古着屋やネットオークションで「ECWCS(エクワックス)パーカー」を見つけたとき、こんな風に悩んだことはありませんか?
「かっこいいけど、これって本物の米軍実物?」
「ゴアテックスって書いてあるけど、いつの時代のもの?」
「サイズ感が分からなくて買うのを迷っている…」
実は、ECWCSパーカーは世代(Gen1〜Gen3)によって機能やシルエットが全く異なり、中にはゴアテックスではない民生品(シビリアンモデル)も多く出回っています。
知識がないまま購入すると、「思っていたシルエットと違う」「実は防水機能がないレプリカだった」という失敗をしてしまいがちです。
この記事では、軍モノのタグの見方から、ジッパー、生地の細部に至るまで、ECWCSゴアテックスパーカーの正しい見分け方を徹底解説します。これを読めば、タグを見ただけでその正体を判別し、自分にぴったりの「一生モノの相棒」を選べるようになります。
【結論】ECWCSパーカーは大きく「3つの世代」に分かれる
まず大前提として、ECWCS(Extended Cold Weather Clothing System=拡張式寒冷地被服システム)のゴアテックスパーカーには、大きく分けて3つの世代が存在します。
まずは、目の前のアイテムがどの世代に当てはまるのか、以下の表で確認してください。
| 世代 | 年代 | 特徴 | 迷彩パターンの主流 |
| Gen1 (第1世代) | 1980年代後半 〜1990年代 | フード一体型 無骨で太めのシルエット | ウッドランドカモ (迷彩) デザートカモ |
| Gen2 (第2世代) | 1990年代後半 〜2000年代 | 収納式フード (襟に収納) 大型ポケット追加 | ウッドランドカモ デザートカモ ACU |
| Gen3 (第3世代) | 2000年代中期 〜現在 | Level 6に該当 大幅な軽量化・薄手化 | UCP (デジカモ) マルチカム |

(画像:Gen1 ウッドランドカモの全体像。フード一体型の無骨なデザインが特徴)
最も人気が高いのは「Gen1(第1世代)」
古着市場で「ECWCSゴアテックス」として最も流通し、ファッションアイコンとして人気なのがGen1です。フードが露出しており、マウンテンパーカーのような見た目が特徴です。
機能性が向上した「Gen2(第2世代)」
Gen1の改良版です。フードが襟の中に収納できるようになり、スタンドカラー(立ち襟)としても着られます。脇下のベンチレーションなども操作しやすくなっています。
全く別物の「Gen3(第3世代)」
Gen3からはシステムが一新され、「Level 6」と呼ばれるジャケットがゴアテックス(または同等素材)の役割を担います。生地が非常に薄く軽量になり、パッカブル(携帯可能)なレインウェアに近い質感になります。
【実践】本物のゴアテックスか?タグとディテールの見分け方
ここからは、実際に商品を手に取ったとき(またはネットの画像を見たとき)に、「米軍実物(本物)」かどうかを見分ける具体的なチェックポイントを解説します。
1. コントラクトナンバー(SPO/DLA)を確認する
首元や裾付近にある「白いタグ(緑タグの場合もあり)」を見てください。ここに米軍官給品であることを証明する番号(コントラクトナンバー)が記載されています。
この文字列の中に、以下のいずれかの表記があれば実物の可能性が非常に高いです。
- DLA… (Defense Logistics Agency):主に1993年以前のモデル
- SPO… (System Program Office):主に1994年以降のモデル

(画像:米軍実物の証であるコントラクトナンバー。写真はDLA-100-92-C-0000とあり1992年製とわかる)
見方の例:
DLA100-92-C-0000
この場合、**「92」という数字が「1992年会計年度」**に予算が下りて製造されたことを示しています。
※ここが空白だったり、単に「MIL-SPEC」とだけ書かれていたりする場合は、民生品(レプリカ)である可能性が高いです。
2. NSN(ナショナル・ストック・ナンバー)で検索する
タグには8415-01-228-1313のような13桁の数字が記載されています。これはNATO諸国で管理される物品番号です。
この番号をGoogleでそのまま検索してみてください。
検索結果に「PARKA, COLD WEATHER, CAMOUFLAGE」などの正式名称が表示されれば、間違いなく実物のデータと一致します。
3. 「GORE-TEX」やシームテープの表記
実物の多くには、裏地の縫い目に防水用の「シームテープ」が貼られています。
Gen1やGen2の多くは、このテープに「GORE-SEAM」という文字がプリントされています。

(画像:裏地のシームテープ。「GORE-SEAM」の文字が見える。経年劣化で剥がれかけている点も実物の証拠)
注意点:Gen3(第3世代)などの新しいモデルや、一部の納入メーカー品では、ゴアテックスという商標を使わず、同等性能の透湿防水素材を使っている場合があります。そのため「GORE-TEXのタグがない=偽物」とは限りませんが、Gen1に関してはゴアテックス表記があるのが基本です。
4. ジッパーのメーカーを確認する
米軍実物で採用されているジッパーは、耐久性の高いメーカーに限られます。
- YKK: 世界トップシェア。多くの年代で見られます。
- IDEAL: 米軍のヴィンテージでよく見られるメーカー。
- SCOVILL: 古い年代(Gen1初期など)で見られることがあります。
もし、無名のペラペラなジッパーがついている場合は、レプリカの可能性を疑いましょう。

(画像:信頼性の高いYKK製ジッパー。Gen1の無骨な真鍮ジッパーが特徴)
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実物(米軍放出品)と民生品・レプリカの違い
市場には「実物」以外に、「民生品(シビリアンモデル)」や「レプリカ」も存在します。これらは決して「悪」ではありませんが、違いを理解しておくことが重要です。
民生品(シビリアンモデル)とは?
軍に納入しているメーカー(Alpha社やRothco社など)が、一般市民向けに販売したモデルです。
- 特徴: 作りや素材は実物に近いが、タグにコントラクトナンバー(DLA/SPO)がない。
- メリット: 実物にはないカラー(ブラックやネイビーなど)が存在し、新品で手に入りやすい。
レプリカ(模造品)の特徴
安価なファッションアイテムとして作られたものです。
- 特徴: 生地がゴアテックスではなくただのナイロン(蒸れる)、縫製が甘い、シームテープが貼られていない(水が染みる)。
- 見分け方: 「Waterproof」とは書いてあるが「Breathable(透湿)」とは書いていないことが多いです。
【サイズ感】失敗しないサイズの選び方
ECWCSは、装備の上から羽織ることを想定しているため、一般的な日本サイズよりもかなり大きめに作られています。
表記サイズの読み方
サイズは「身幅(胸囲)」と「着丈(身長)」の組み合わせで表記されます。
- 前半(身幅): X-Small, Small, Medium, Large, X-Large
- 後半(着丈): Short, Regular, Long
日本人向けの黄金サイズは「Small-Short」または「Medium-Short」です。
- Small-Short: 日本のM〜Lサイズ相当。着丈がスッキリしており、街着として最もバランスが良い。
- Medium-Regular: 日本のL〜XL相当。オーバーサイズでダボっと着たい人向け。
Gen1は特に着丈が長めに感じるため、身長175cm以下の方は「Short」丈を選ぶと野暮ったくなりません。
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【深掘り】知っておくべき「ECWCS Gen1」の2つのタイプと劣化リスク
ここからは、さらに一歩踏み込んだ専門的な情報をお伝えします。体験談ではなく事実として、購入時にチェックすべき「マニア視点」のポイントです。
1. Gen1には「初期型」と「後期型」がある
一番人気のGen1(第1世代)ですが、実は年代によってディテールが異なります。
- 初期型(〜1990年頃): フードの縁にスナップボタンがついている(別売りのファーを取り付けるため)。
- 後期型(1991年頃〜): フードのボタンがなくなり、幅が広くなった。
市場価値としては、流通数が少ない「初期型」の方が高値で取引される傾向にあります。首元のタグだけでなく、フードの縁にボタンがあるかどうかもチェックポイントの一つです。
2. ゴアテックス特有の「経年劣化」に注意
「実物」であっても、製造から30年以上経過しているものが多いため、以下の劣化リスクは避けて通れません。
- シームテープの剥離: 裏地の防水テープが剥がれて浮いている個体が多いです。アイロンで再接着できる場合もありますが、粉状になっている場合は寿命です。
- 生地の浮き(バブリング): 表面の生地とゴアテックス膜が剥離し、ボコボコと水膨れのような状態になる現象です。これが発生すると修復は困難です。
ネット購入の際は、タグだけでなく**「裏地のテープの状態」や「生地の浮きがないか」**を必ず画像で確認するか、ショップに問い合わせることを強くおすすめします。

(画像:袖口のベルクロと大型ポケット。こうした細部のディテールも本物を見極めるポイント。古着らしい使用感も見られる)
まとめ
ECWCSゴアテックスパーカーの見分け方のポイントを整理します。
- 世代を確認: フード一体型のGen1か、収納式のGen2か。
- タグを確認: 「DLA」や「SPO」から始まる番号があるか。
- NSNを確認: 13桁の数字を検索して品名が出るか。
- 状態を確認: シームテープの剥がれやバブリングがないか。
ECWCSは単なる古着ではなく、米軍の英知が詰まった高機能ウェアです。実物は年々数が減り、価格も高騰傾向にあります。
ぜひこの記事の見分け方を参考に、偽物を回避し、長く愛用できる「本物の1着」を見つけ出してください。
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