実物 スイス軍 デニム ワークジャケットの年代をざっくり分けるとこんな感じです。↓
- 前期型:だいたい 1950~60年代頃
- 後期型:だいたい 1980年代頃
日本のミリタリーショップでは、前期型を「1950年代」、後期型を「1980年代」として扱っています。
ただし注意点があります。
このアイテムは市場で「1950s」と言う店もあれば「1960s」と言う店もあるので、個体差やショップ側の分類にズレがあります。海外の販売例でも1950年代表記と1960年代表記が混在しています。
いちばん無難な結論は、「よく見る濃いブルーの前開きデニムワークジャケットは、前期型なら1950年代系、後期型なら1980年代系」です。
年代ごとのディティールの違い
ボタンの違い
前期型と後期型のいちばん大きな違いはボタンです。
日本のミリタリーショップでは、前期型はアルミなどの金属ボタン、後期型は樹脂(プラスチック)ボタンとして売られていることが多いです。
細かな違い
細かい部分では、後期型の販売ページに背面ウエストのベルトフック、内側のドローコード、胸ポケット×2、内ポケット、襟ホックが付く場合があります。
例えば前期型では、両サイドの金具(ベルトキーパー)が年代や個体差で付かないものもあります。つまり、ボタン以外の差は固定的ではなく、個体差・製造差がかなりあると思ってもらった方がいいです。
シルエットは大差なし
後期型も、前期型と比べて、素材やシルエットに大きな差はありません。色味もどちらもブルーグレー~グリーンがかったグレー系のスイスデニムです。
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実物 スイス軍デニムワークジャケット 前期型

実物 スイス軍デニムワークジャケット 後期型

| 項目 | 前期型 | 後期型 |
|---|---|---|
| 日本のショップでの最大の見分け点 | アルミなどの金属ボタン | 樹脂・プラスチックボタン |
| 年代感の売られ方 | 1940~50年代頃、または1950年代系として売られることがある | 主に1980年代以降として売られることがある |
| 生地 | ヘビーコットンのデニム系 | 前期と大差ないとされるデニム系 |
| 色味 | ブルーグレー、グレーとグリーンの中間色系 | ブルーやグリーンがかったグレー系 |
| シルエット | ワークジャケット型 | 前期と大きな差はない扱い |
| 胸ポケット | 2ポケット系で流通が多い | 2ポケット系で流通が多い |
| 内ポケット | 個体差あり、無いものもある | 個体差あり、無いものもある |
| ウエスト周り | 金具・フック類は個体差あり | 背面フックや内側ドローコードありの個体が見られる |
| 注意点 | ボタン以外は個体差が多い | ボタン以外は個体差が多い |
要するに、日本のミリタリーショップ基準では「前期=アルミボタン」「後期=樹脂ボタン」で覚えればほぼOKです。
それ以外のディテール差はあるにはあるけど、個体差が強くて絶対基準にはしにくいです。
スイス側の一次情報
結論だけ先に言うと、スイス軍の公的に見つかる公開資料では、古着屋が言うような形で「このデニムワークジャケットは1950年代型です」とはっきり年代ラベルを振っているものは、今回見つけられませんでした。
なので、「1950s」「1960s」「1980s」という言い方は、現場では主にサープラス業者・古着市場の呼び方と考えたほうが無難です。
そのうえで、スイス側の公的資料から確認できることはあります。
まず現在のスイス軍は、作業服を「Tenü C(Arbeitsanzug=作業服)」と呼んでいます。スイス国防当局の公式ページでもそう表記されています。さらに2023年以降の新装備導入で、このTenü C が置き換え対象になっていることも明記されています。つまり、少なくとも公的な整理としては、あの系統は「デニムジャケット」より“作業服系統”として扱われています。
また、armasuisse の公的PDFでは、スイス軍の被服史として、第一次大戦期には旧来の青い制服と新しい灰色の制服が混在していたこと、さらに1940/41年に被服規定が更新されたこと、1949年のOrdonnanz 1949の後に新しい時代に入ることが書かれています。
つまり、公的史料から読める大きな流れは、
青系の旧制服時代 → 灰色系への移行 → 戦後の新規格化
です。
ここが大事です。
古着市場で言う「スイス軍デニムワークジャケット 1950s」は、公的資料の正式な年代呼称というより、戦後の作業服系統を古着側が便宜的にそう呼んでいる可能性が高いです。少なくとも、今回確認できたスイス側の公開一次資料からは、ショップ表記そのままの「1950年代デニムワークジャケット」断定までは取れませんでした。
なので、いちばん堅い言い方をすると、こうです。
本場の公的資料ベースでは
- 正式な分類は Tenü C / Arbeitsanzug(作業服)系統
- 公開史料では 青→灰→戦後規格化 の流れは確認できる
- ただし その1着を「1950年代型」と直接断定する公的公開資料は見つからない
だから、「スイス軍の作業服(Tenü C系統)として流通している個体で、古着市場では1950〜60年代頃と説明されることが多い」くらいで捉えるのがいちばん無難です。
スイス側の一次情報では前期・後期とは言わない
結論から言うと、スイス側の一次情報で追えるのは「このデニムワークジャケット単体の前期・後期」ではなく、スイス軍の被服体系全体の変化です。
つまり、スイスの公的資料は古着屋のように「この1着は1950年代前期型、こっちは1980年代後期型」とは整理していません。
公的に確認できるのは、青い旧制服 → フィールドグレー化 → 1940/41規定更新 → 1949年の新時代 → 1957/58迷彩試験 → 1960年代迷彩導入 → 1990年代のTenü C系統 → 2023年以降MBASへ更新という大きな流れです。
なので、スイス側の一次情報ベースで安全に言えることはこうです。
古着市場で言う「スイス軍デニムワークジャケット」は、スイス軍の正式文書ではまずArbeitsanzug(作業服)/Tenü C系統として理解するのが正確です。現在のスイス軍公式ページでも、作業服は Tenü C という公式呼称で扱われています。
そして、年ごと・年代ごとの違いは次のように整理できます。
年ごと・年代ごとの違い
1914年ごろまでは、スイス軍は旧来の青系制服の時代です。armasuisse の被服史資料では、第一次大戦初期に旧い濃青制服「Tenue Bleu」の上へ、急ごしらえの灰色カバーを着けたことが説明されています。
第一次大戦中(1916年前後~1918年)になると、実戦的な理由からfeldgrau(フィールドグレー)制服へ移っていきます。ただし一気に全面更新ではなく、旧い青い制服と新しい灰色制服が混在していた、と一次資料ベースの歴史記事で説明されています。さらに1918年にはスイス軍の鋼鉄ヘルメットが制式化されました。
1940/41年は大きな節目です。公的資料では、この時期に1926年の被服規則が改定され、兵用の上衣が**立襟から折返し襟(Umlegekragen)**になり、着心地が改善されたとあります。ズボンは小変更、外套類は基本継続という扱いです。つまり、この時点の違いは「デニム作業服の差」ではなく、軍服規定そのものの更新です。
1943年には、鋼鉄ヘルメットの迷彩方法がまた変わります。戦争初期にはリバーシブルのヘルメットカバーが出ましたが、加工上の問題があり、1943年7月に連邦参事会が黒っぽい粗面塗装を採用したとあります。これは被服・装備の実用化が進んだことを示す資料です。
1949年は「新時代の始まり」と位置づけられています。armasuisse の歴史記事では、Ordonnanz 1949 の導入後に新しい段階へ入ったと明記されています。ここでは最初期のゴム底行軍靴にも触れられており、戦後の規格更新が進んだことがわかります。古着市場で戦後作業服を「1950s」と呼ぶ背景は、この1949年以降の戦後規格化に重なる可能性がありますが、公開一次資料はそのデニムジャケットを直接そう呼んではいません。
1957/58年には、スイス軍は迷彩オーバーオールの試験を行っています。資料では、制服の上から着る迷彩色のつなぎを試したが、うまくいかず消えたとあります。つまりこの時期は、作業服系よりも迷彩戦闘服の試行錯誤が公的記録に残っています。
1960年代になると、armasuisse の一次資料は、スイスも迷彩化の流れに入ったと説明しています。記事中では、戦後ほぼ各国が迷彩化し、スイスは1960年代に追随したとあります。ここで重要なのは、スイス側の公式な被服史の関心が、古着市場のいう「デニム前期・後期」ではなく、戦闘服体系の変化にあることです。
1990年代になると、現在公式が「Tenü C」と呼ぶ作業服系統の近い祖先として、Kampfbekleidung 90/06 が導入期に入ります。スイス軍の公式MBAS解説では、現在使われている旧システムは1990年代に導入された Kampfbekleidung 90/06 で、2023年以降のMBAS更新対象になっていると説明しています。
2018年には、MBAS調達が議会承認され、2023年から段階導入、2025~2026年に本格展開という流れです。公式には、MBASは Arbeitsanzug(Tenü C)を置き換えるものだと明記されています。つまり現代の公的整理では、「作業服」はTenü C、その後継がMBASです。
表で整理
| 時期 | スイス側一次情報で確認できる違い | 何が変わったか | デニムワークジャケットとの関係 |
|---|---|---|---|
| 1914年ごろまで | 旧来の青い制服 | 濃青系の旧制服時代 | まだ古着市場で言う戦後デニム作業服の時代ではない |
| 第一次大戦中(1916前後~1918) | フィールドグレー制服へ移行、青と灰が混在 | 実戦向けの色へ更新、1918年に鋼鉄ヘルメット制式化 | 「青→灰」の大転換期 |
| 1940/41 | 1926年規則の更新 | 上衣が立襟から折返し襟へ、着心地改善 | 個体差ではなく被服規則レベルの更新 |
| 1943 | ヘルメット迷彩方式を再変更 | カバー方式から粗面塗装へ | 被服・装備の実用化が進む時期 |
| 1949 | Ordonnanz 1949 導入 | 戦後の新規格化、新時代の始まり | 古着市場の「戦後型」イメージに近い起点候補 |
| 1957/58 | 迷彩つなぎの試験 | 制服の上に着る迷彩オーバーオールを試験 | 公式には迷彩服試験の記録が目立つ |
| 1960年代 | 迷彩服導入の流れ | スイスも迷彩化へ | デニム作業服より戦闘服体系の変化が主題 |
| 1990年代 | Kampfbekleidung 90/06 の時代 | 現行旧システムの基盤が成立 | 現代のTenü C系統につながる実務装備時代 |
| 2018 | MBAS調達承認 | 新被服・装備体系の予算化 | 旧Tenü Cの後継計画が正式化 |
| 2023以降 | MBAS段階導入 | Tenü C(Arbeitsanzug)を置き換え | 現在の公式整理では「作業服=Tenü C」 |
| 2025~2026 | MBAS配備拡大 | 部隊単位で本格展開 | 旧作業服系は完全に旧世代化していく流れ |
実務的な結論
スイス側の一次情報だけで厳密に言うなら、
- 年ごと・年代ごとの違いは「軍の被服体系の変化」としては追える
- でも 古着市場で言う“スイス軍デニムワークジャケット前期・後期”を、公式資料そのままで切ることはできない
- 公式に近い言い方は 「戦後のスイス軍作業服系統」 または 「Tenü C / Arbeitsanzug の前史にある作業服」 です
「スイス側の公的資料では、青制服時代、フィールドグレー化、1940/41規定更新、1949年以降の戦後規格化、1957/58迷彩試験、1960年代迷彩導入、1990年代Tenü C系統、2023年以降MBAS更新という流れが確認できる。一方、古着市場で言うデニムワークジャケットの“前期・後期”は、公式文書上の呼称ではない」。
最後に
スイス側の一次情報的なマニアックな内容はさておき、日本市場の前期・後期と覚えておくとわかりやすいと思います。
- 前期型:だいたい 1950~60年代頃
- 後期型:だいたい 1980年代頃
これで十分です。
そして、実物 スイス軍デニムワークジャケットをよく取り扱っているところで有名なショップはWAIPERです。※記事の執筆時点では後期型が人気です。
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実物 スイス軍デニムワークジャケット 前期型

実物 スイス軍デニムワークジャケット 後期型

