「青」でもなく「緑」でもない、絶妙なニュアンスカラーのブルーグレー。
ユーロミリタリーの中でも、その独特な色合いとシルエットで高い人気を誇るのが「スイス軍 デニムワークパンツ」です。
日本では「グリーンデニム」の愛称で親しまれていますが、実はこれ、現地スイスでは「デニム(Jeans)」とは呼ばれていないことをご存知でしょうか?
本記事では、日本で流通している実物のスペックデータ(前期・後期の違い)やコーデに加え、スイス現地の情報(本来の用途や背景)も交えて、この名作パンツの全貌を徹底解説します。
スイス軍デニムパンツの正体
現地での呼び名は「Arbeitshose(作業ズボン)」
日本では「スイス軍デニム」と呼ばれますが、スイス軍の公用語(ドイツ語)では、単に「Arbeitshose(アルバイツ・ホーゼ=作業ズボン)」や、ジャケットとセットで「Arbeitsanzug(作業服)」と分類されています。
戦闘用(Combat)ではなく、あくまで基地内での整備、清掃、調理、あるいは懲罰作業などで着用されるための「汚れ仕事専用の服」でした。
なぜ「デニム」と呼ばれるのか?
現地では「綿100%のツイル生地」として扱われますが、経糸に色糸(グレーグリーン)、緯糸に生成り糸を使った綾織り(ツイル)の生地構造が、一般的なデニムと同じであるため、日本の古着市場で「スイスデニム」「グリーンデニム」と名付けられました。
色味は、第一次世界大戦頃からドイツ語圏の軍隊で広く採用されてきた伝統色「フェルトグラウ(フィールドグレー)」の流れを汲んでおり、光の当たり方によって緑にもグレーにも見える独特な発色をします。
【徹底比較】前期型(50s)と後期型(80s)の違い
市場で流通しているモデルは、大きく「前期型(主に1950年代〜)」と「後期型(主に1980年代〜)」に分けられます。
前期型(1950年代〜):アルミボタン

ヴィンテージとしての評価が高く、コレクター人気が高いモデルです。
- ボタン: スイス軍の刻印が入った「アルミニウム製ボタン」を採用。無骨なシルバーの輝きが特徴です。
- 謎のアルミバッジ: 一部の個体のウエスト部分に、ボタンのようなアルミ製のディスクが付いていることがあります。これは現地の情報によると、IDタグ(個体識別)や部隊章としての役割を果たしていたと言われています。国民皆兵(ミリティア制)を敷くスイスならではの、装備品管理システムの名残と考えられます。
後期型(1980年代〜):樹脂ボタン

1980年代以降のモデルは、より実用的にアップデートされています。
- ボタン: アルミから「プラスチック製(樹脂)ボタン」に変更。色はグレーやオリーブなど個体差があります。
- シルエットの変化: 基本的なパターンは前期と同じですが、縫製技術の向上により、個体差が少なくなり、より安定した品質になっています。
スイス軍デニムパンツの前期型・後期型ならWAIPER公式ショップで手に入ります。
「貫通式ポケット」がある本当の理由
このパンツの最大の特徴であり、購入者を悩ませるのが、脇ポケットの横にある「貫通式ポケット(スルーポケット)」です。
オーバーパンツとしての設計
「なぜポケットの底が抜けているの?」と驚く方も多いですが、これは「ズボンの上から履くこと」を想定しているためです。
当時のスイス兵は、ウールの制服や戦闘服の上からこの「作業ズボン」を重ね履きしていました。中の制服のポケットに入っている物(タバコや手帳など)を、作業ズボンを脱がずに直接取り出せるように、あえて穴が開いているのです。
※街着として履く場合は、下着が見えないように注意が必要です(通常の両サイドポケットは袋状になっているので、スマホなどはそこに入れられます)。
サイズ感と表記の読み解き方
スイス軍のサイズ表記は非常に合理的ですが、初見では難解です。
「45/76」のような表記の意味
スイス現地のサイズチャートに基づくと、この数字は以下を表していることが多いです。
- 前の数字(例: 45): 股下の長さや身長のコード(※年代により異なる解釈あり)
- 後ろの数字(例: 76): ウエストの周囲(cm)
特に重要なのは後ろの数字です。「76」ならウエスト76cm、「84」なら84cmと、cm実寸がそのまま表記されているケースが多く、日本人にも分かりやすいのが特徴です。
実寸データ(目安)
- W72〜76: レディース〜細身メンズ
- W80〜84: ゴールデンサイズ(Mサイズ相当)
- W88〜: ゆったり履きたい方向け
【注意】縮みについて
コットン(綿)100%の作業服としてガシガシ洗われることを想定した生地ですが、デッドストックから洗うと、ウエストで約1〜2cm、レングスで約2〜3cmの縮みが出ることがあります。
サイズ感は、WAIPER公式ショップを見るとイメージしやすいと思います。身長・体型別に写真が見れます。
おっさん向け スイス軍デニムのコーディネート例

「作業服」を出自に持つパンツですが、そのデザインはスイスらしく非常に洗練されています。
1. オリジナルカラーで「ユーロワーク」
独特のグリーンがかったグレーは、ネイビーやブラックのトップスと相性抜群。
- トップス:バスクシャツ(ボーダー)やモールスキンジャケット
- 足元:サービスシューズやジャーマントレーナーこれらを合わせれば、土臭さを抑えた上品なユーロワークスタイルが完成します。
2. 「黒染め(Black Overdyed)」でモードに
現地ではあまり見られませんが、ファッションアイテムとして人気なのが「黒染め」です。
スイスデニムの分厚い生地は染料をよく吸いますが、芯まで真っ黒にはなりきらず、「墨黒(チャコール)」のような深い色合いになります。
モードブランドのワイドパンツのような雰囲気が出るため、あえて黒染めを探すのもおすすめです。
前期型・後期型・黒染めのかっこいいコーディネート術は、WAIPER公式ショップを見ると大変参考になり、イメージしやすいと思います。身長・体型別に写真が見れますよ。
まとめ:歴史を知るとさらに愛着が湧く
スイス軍のデニムワークパンツは、単なる「古いズボン」ではなく、「国民皆兵のスイスを守る兵士たちが、基地での重労働に耐えるために作られた機能服」です。
- 前期型(アルミボタン): 歴史的価値と重厚感を楽しみたい方へ。
- 後期型(プラボタン): 手頃な価格でタフなパンツが欲しい方へ。
貫通ポケットや独特の色味など、語れるディテールが満載のこの一本。ぜひその背景も楽しみながら履きこなしてください。
スイス軍デニムパンツを買うなら、実物を多く取り扱っているWAIPER公式ショップがおすすめです。前期型・後期型・黒染めやオリジナルが取り揃っていますよ。※人気のものはすぐ売り切れになります。
