A-2デッキジャケットの年代を見分けるには、内側の軍用ラベルに記載された契約番号(コントラクトナンバー)を確認する方法が最も確実です。
ラベルが読めない場合でも、胸ポケットの形状や表地の素材などから、おおよその年代を推定できます。
この記事では、米軍の調達機関であるDLA(国防兵站局)の公式資料、米軍仕様書、海外に現存する実物の記録をもとに、1960年代・1970年代・1980年代の違いを解説します。
A-2デッキジャケットの年代別の違い【比較表】
| 確認部分 | 1960年代 | 1970年代 | 1980年代 |
|---|---|---|---|
| 契約番号 | DSAが中心。初期は番号形式が異なる | DSAからDLAへ移行 | DLAが中心 |
| 胸ポケット | 初期は三角フラップ。後に四角形へ移行 | 四角形が一般的 | 四角形が一般的 |
| 表地 | 初期に綿素材。1964年契約の畝織り生地、後年の混紡生地も確認できる | 綿・ナイロン混紡が一般的 | 綿・ナイロン混紡が一般的 |
| 裏地 | 合成繊維のパイル系裏地 | パイル系裏地 | パイル系裏地 |
| ジッパー | CONMARなど | TALON、GENERALなど | SCOVILLなども確認できる |
| 袖口 | 初期・移行期に仕様差がある | 内側のリブが一般的 | 内側のリブが一般的 |
| 裾のアジャスター | 初期型と後続型で仕様差がある | 両側に装備される型が一般的 | 両側に装備される型が一般的 |
| 年代判定の決め手 | 契約ラベル+初期型の構造 | 契約番号の年度 | 契約番号の年度 |
※年代ごとの特徴は、現存する実物の記録に基づく傾向です。製造業者や契約の違い、修理によって例外があります。
特に、胸ポケットが三角形なら必ず1964年以前というわけではありません。 海外の軍装品専門店には、1966年契約とされる三角フラップの実物も記録されています。
参考:Omega Militaria|1966年契約とされる初期型A-2実物(英語)
実物と復刻品の写真を比較できるページ
- 実物
- 復刻品
コントラクトナンバーで年代を見分ける
A-2デッキジャケットの内側には、契約番号やサイズ、製造業者などを記載したラベルが付いています。
契約番号を読むことで、米軍がいつの年度に調達契約を結んだジャケットなのかを確認できます。
年代別の契約番号
| 契約年度の目安 | 契約番号の特徴 |
|---|---|
| 1962~1964年 | DSA-1で始まり、後方に年度を示す数字がある形式 |
| 1965~1966年 | DSA-1やDSA-100で始まる形式。年度を直接読めないものもある |
| 1967~1977年頃 | DSA-100-YY-C-XXXX |
| 1978~1980年代 | DLA-100-YY-C-XXXX |
YYは契約年度の下2桁、XXXXは契約を識別する番号を表します。
米国防兵站局の公式沿革では、Defense Supply Agency(DSA)は1962年に業務を開始し、1977年1月1日にDefense Logistics Agency(DLA)へ改称されています。
そのため、1970年代後半は契約番号の切り替わりにも注目します。
参考:米国防兵站局(DLA)公式|History of DLA
実際の契約番号の読み方
1978年契約の実物A-2には、次の番号が確認できます。
DLA-100-78-C-9882
この場合、「78」が1978年度の調達契約を示します。
参考:Hooked-on|1978年契約A-2デッキジャケット実物とラベル写真(英語)
また、1985年契約の実物として「DLA100-85-C-0607」が記録されています。
参考:Tradera|1985年契約A-2実物の記録(英語)
ただし、これは製造日の証明ではなく、契約年度を示すものです。実際に縫製された日付や部隊に支給された日付とは一致しない場合があります。
1960年代のA-2デッキジャケットの特徴
1960年代のA-2デッキジャケットには、初期型ならではの特徴があります。
なかでも目立つのが、胸ポケットのフラップ形状です。
胸ポケットが三角形の初期型
初期型では、左胸のポケットフラップの先端が三角形になっています。
一方、後続のモデルでは、フラップの下辺が直線的な四角形に変更されています。
このため、三角フラップは初期型を見分ける重要な手掛かりです。
ただし、三角フラップの採用終了年を1964年と断定することはできません。1966年契約とされる実物も存在するため、契約ラベルとの照合が必要です。
参考:Omega Militaria|三角フラップを持つ1960年代A-2の実物写真
1964年契約には特殊な生地の個体がある
1964年契約のA-2には、畝のある厚手のコットン生地(Bedford cord/ジャングルクロス系)が使用された実物が確認されています。
1960年代初期のA-2には、バックサテン生地を使用したタイプもあります。
したがって、初期型だからすべて同じ生地というわけではありません。
参考:Vintage Leather Jackets Forum|1964年契約A-2実物の各部写真(英語)
1970年代のA-2デッキジャケットの特徴
1970年代のA-2は、初期型と比較して外観がほぼ定着した時期のモデルです。
主な特徴は次のとおりです。
- 左胸に四角形のフラップポケット
- 綿・ナイロン混紡の表地
- 内側にパイル系の防寒裏地
- フロントはジッパーとボタンの二重構造
- 袖口の内側に防風用リブ
- 裾の両側にサイズ調整用アジャスター
1978年契約の実物では、TALON製の真鍮ジッパーが確認されています。
ただし、これらの構造は1980年代のA-2にも引き継がれています。
1970年代と1980年代を外観だけで正確に区別するのは難しいため、契約番号を優先して確認します。
参考:1978年契約の実物A-2(外観・ラベル・ジッパー・袖口の写真)
1980年代のA-2デッキジャケットの特徴
1980年代のA-2も、1970年代から引き継がれた基本的なデザインを採用しています。
胸ポケット、裏地、袖口、裾のアジャスターなどは、見た目だけでは年代差を判断しにくい部分です。
1980年代の実物で注目したいのは、DLAで始まる契約番号です。
例えば、次の表記があれば、1986年度の契約と読み取れます。
DLA100-86-C-0880
この番号を記載した米海軍実物A-2が国内のヴィンテージ取扱店にも掲載されています。
楽天市場|1986年契約の米海軍実物A-2・ラベルと各部写真
また、1980年代の実物には、SCOVILL製などのジッパーを使用した個体も確認できます。
ただし、ジッパーは製造業者や修理によって異なるため、メーカー名だけでは年代を特定できません。
米軍仕様書「MIL-J-21708」から年代を確認する
A-2デッキジャケットの仕様を調べる際に重要なのが、米軍の「MIL-J-21708」系統の仕様書です。
これは寒冷地用ジャケットに関する米軍仕様書で、改訂によって末尾のアルファベットが変わります。
米国防総省の仕様書記録から、以下の改訂が確認できます。
| 仕様書 | 確認できる発行日 |
|---|---|
| MIL-J-21708F | 1985年10月28日 |
| MIL-J-21708G | 1987年7月1日 |
1987年版のMIL-J-21708Gは、1985年版Fを置き換える仕様書として発行されました。
また、この仕様書は1999年5月15日に後継指定なしで廃止されています。
参考:
ここで注意したいのは、仕様書の改訂年とジャケットの製造年代は同じではないことです。
ラベルに「MIL-J-21708」と記載されていても、それだけでは契約年を特定できません。
また、改訂が重ねられた後期仕様には、従来のオリーブ色A-2とは異なる寒冷地用ジャケットも含まれます。
年代を調べるときは仕様番号だけでなく、契約番号とジャケットの種類を照合してください。
実物とレプリカの年代表記の違い
| 確認項目 | 米海軍実物 | レプリカ |
|---|---|---|
| 契約番号 | 米軍の調達契約を示す番号 | 契約番号を模した表記が使われる場合がある |
| 1960年代型の三角フラップ | 実物に存在する | 初期型復刻品にも存在する |
| 1970~80年代型の四角フラップ | 実物に存在する | 復刻品にも存在する |
| ジッパー | 当時の部品、または後年の交換品 | 現代製や復刻パーツ |
| 製造業者 | 当時の軍納入契約業者 | 現代の衣料メーカー |
| 年代の判断 | 契約年度と仕様を照合 | 復刻対象となった年代と実際の製造年は別 |
例えば、1964年型を再現したレプリカであっても、製造されたのは現代です。
また、1960年代の実物でも、ジッパーやボタンが後年交換されている場合があります。
そのため、実物かレプリカかの判別と、年代の判別は分けて考える必要があります。
A-2デッキジャケットの年代を調べる手順
年代がわからないA-2デッキジャケットを調べる場合は、次の順番で確認します。
- 内側のラベルを確認する。 DSA・DLAなどの契約番号を探す。
- 契約年度を読み取る。 年度コードがある場合は、その2桁を確認する。
- 胸ポケットを見る。 三角形なら1960年代初期型の可能性がある。
- 表地を確認する。 綿の生地組織や綿・ナイロン混紡の違いを確認する。
- 実物の資料と照合する。 ジッパー・袖口・裏地などが契約年代に対応しているか確認する。
契約ラベルが欠損している場合は、外観からおおよその年代を推定することになります。
特に1970年代と1980年代は共通する仕様が多く、ラベルなしでの正確な年代特定は困難です。
まとめ|A-2デッキジャケットの年代は契約番号で見分ける
A-2デッキジャケットは、1960年代から1980年代にかけて米海軍で使用された防寒ジャケットです。
年代を見分けるうえで最も重要なのは、内側のラベルに記載されたコントラクトナンバーです。
- 1960年代: DSA契約が中心。初期型の三角フラップや生地の違いが手掛かりになる。
- 1970年代: DSAからDLAへ移行。四角形のフラップなど基本構造が定着。
- 1980年代: DLA契約が中心。外観は1970年代とよく似ている。
胸ポケットやジッパーの形状は年代を推定する補助資料として役立ちますが、特定の製造年を断定する根拠にはなりません。
正確に調べたい場合は、契約番号と実物の仕様を組み合わせて判断することが重要です。
1960~80年代の実物と復刻品を写真で比較できるページ
