ダブルブレスト(二列ボタン)で、厚手のウール生地を使用した軍用コートには、海軍のピーコートや陸軍・空軍のグレートコートなどがあります。
今回は、ダブル前・厚手ウール・日本国内で取扱実績のある軍モノに絞って19種類を紹介します。
米軍だけでなく、イギリス、フランス、スウェーデン、スイスなど、海外の軍用コートも含めています。
ダブル前・厚手ウールの軍用コート一覧
| 軍・モデル | 主な色 | 丈の特徴 |
|---|---|---|
| 米海軍 カージーウール Pコート | ダークネイビー | ショート |
| 米海軍 メルトンウール Pコート | ダークネイビー | ショート |
| スウェーデン海軍 8ボタンコート | ダークネイビー | ショート |
| スウェーデン軍 1960年代 Pコート | ダークネイビー | ミドル |
| スウェーデン軍 カフス付き Pコート | ダークネイビー | ミドル |
| イタリア海軍 Pコート | ネイビー | ミドル~ロング |
| ポルトガル軍 Pコート | ダークネイビー | ミドル |
| スウェーデン軍 ウールロングコート | ダークネイビー | ロング |
| スイス軍 前期型グレートコート | ブルーグレー | ロング |
| スイス軍 後期型グレートコート | ブルーグレー | ロング |
| ポーランド空軍 オーバーコート | ブルーグレー | ロング |
| カナダ陸軍 オーバーコート | ダークグリーン | ロング |
| イギリス陸軍 1940パターン | カーキ・オリーブ | ロング |
| イギリス陸軍 1951パターン | カーキ・オリーブ | ロング |
| イギリス空軍 RAF グレートコート | ブルーグレー | ロング |
| フランス陸軍 カポート | カーキ・ブラウン系 | ロング |
| 米陸軍 1943年型将校用オーバーコート | キャメル・OD系 | ミドル |
| 米海兵隊 1960年代オーバーコート | グリーン系 | ロング |
| ドイツ国防軍 M36将校用オーバーコート | フィールドグレー | ロング |
※年代や製造契約によって、生地・ボタン・着丈などに違いがあります。
海軍系の厚手ウールコート
米海軍 U.S.NAVY カージーウール Pコート
アメリカ海軍の代表的な防寒コートです。
1950~1960年代の実物には、カージー(Kersey)と呼ばれる厚手のウール生地が使用されています。
カージーは綾織りの密度が高く、しっかりした厚みと重量感が特徴です。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のカージーウール
- ダークネイビー
- 錨模様のボタン
- 大きく立ち上げられる襟
- 腰付近まで覆う着丈
第二次世界大戦期から戦後にかけての米海軍Pコートには、年代ごとにボタンやポケットの仕様が異なる個体もあります。
米海軍 カージーウール Pコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
米海軍 U.S.NAVY メルトンウール Pコート
こちらもアメリカ海軍の実物Pコートですが、1970年代以降の個体ではメルトンウールが代表的です。
メルトンはウール生地を縮絨して表面を密に仕上げたもので、風を通しにくい厚手の生地です。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウールメルトン
- ダークネイビーから黒に近い色調
- 錨模様のボタン
- ハンドウォーマーポケット
- 裏地付き
米海軍の制服規定でも、Pコートはダブルブレストのメルトンウール製として記載されています。
なお、カージーとメルトンの使い分けには製造年代による違いがありますが、特定の年にすべて切り替わったわけではありません。
米海軍 メルトンウール Pコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
スウェーデン海軍 ダブルフェイス 8ボタン ウールコート
スウェーデン海軍の実物ウールコートです。
特徴は、二重のウール生地を使用したダブルフェイス構造。通常の厚手メルトンとは異なる生地構造を持っています。
前面は8ボタンのダブルブレストで、左右どちらの前合わせでも閉じられる仕様です。
主な特徴
- ダブルフェイスの厚手ウール
- 8ボタンのダブルブレスト
- ダークネイビー
- 金色の海軍系ボタン
- 左右どちらでも留められる前合わせ
- 襟を閉じるための隠しボタン
ボタンにはスウェーデンの三つの王冠や錨を取り入れた意匠が見られます。
スウェーデン海軍 8ボタンウールコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
スウェーデン軍 1960年代 ダブルブレスト Pコート
1960年代を中心とするスウェーデン軍の実物ピーコートです。
目の詰まったウールメルトンが使用され、前面には二列のボタンを配置しています。
米海軍Pコートと比べると、金色のボタンやエポレットなど、制服としての装飾が目立ちます。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウールメルトン
- ダークネイビー
- 金色の三つの王冠をあしらったボタン
- エポレット
- フラップ付きポケット
- ピークドラペル
襟の先端が上を向いたピークドラペルも特徴です。
スウェーデン軍 1960年代Pコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
5. スウェーデン軍 1960年代 カフス付き Pコート
同じスウェーデン軍のPコートでも、袖口に特徴を持つタイプです。
厚手のウールメルトンを使用し、袖口はドレスシャツのようなカフス状の作りになっています。
主な特徴
- ダブル前のピーコート型
- 密度の高いウールメルトン
- ダークネイビー
- 折り返せるカフス状の袖口
- 腰から太もも付近の着丈
前述の1960年代ダブルブレストPコートとは細部のデザインが異なるため、同年代の別仕様として紹介しています。
スウェーデン軍 カフス付きPコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
イタリア海軍 ウール Pコート
イタリア海軍の実物ウールコートです。
ネイビーの生地に金色の錨ボタンを組み合わせた、海軍らしいデザインが特徴です。
国内で紹介されている実物には、一般的なショート丈のPコートより長めの個体もあります。
主な特徴
- ダブルブレスト
- ウール生地
- ネイビー
- 金色の錨ボタン
- 大きな襟
- 比較的長めの着丈
イタリアの軍装品販売資料でも、海軍のダブルブレストPコートが確認できます。
海外資料:Marina Militare Pea Coat(Militarygoods)
ポルトガル軍 ウール Pコート
ポルトガル軍の実物ピーコートです。
ダークネイビーの厚手ウールメルトンを使用した、装飾を抑えたデザインになっています。
主な特徴
- ダブル前のピーコート型
- 密度の高いウールメルトン
- ダークネイビー
- フロントポケット2か所
- サイドスリット
- 比較的長めのPコート丈
特徴的なのは、両脇に設けられたスリットです。
陸軍・空軍系の厚手ウールロングコート
スウェーデン軍 ダブルブレスト ウールロングコート
スウェーデン軍の実物ロングコートです。
1960年代頃の個体を中心に、厚手のウールメルトンを使用したモデルが確認されています。
Pコートより着丈が長く、膝付近まで覆う作りです。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウールメルトン
- ダークネイビー
- ピークドラペル
- 金色の三つの王冠ボタン
- エポレット
- フラップ付きポケット
襟やボタンには同時代のスウェーデン軍Pコートと共通する意匠が見られますが、ロング丈である点が大きな違いです。
スウェーデン軍 ウールロングコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
スイス軍 前期型 ウール グレートコート
スイス軍が使用したブルーグレーのウール製グレートコートです。
国内で前期型と呼ばれるタイプは、1940~1950年代頃の金属ボタン仕様です。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウールメルトン
- ブルーグレー
- スイス国旗の金属ボタン
- 深い前合わせ
- チンストラップ
- 折り返し式の袖口
- 背面の調節ベルト
前身頃の重なりが深く、首元までボタンを留められる防寒構造になっています。
スイス軍 前期型グレートコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
スイス軍 後期型 ウール グレートコート
こちらは1960年代から1990年代初頭まで採用されていたタイプです。
前期型と同様に、厚手のウールメルトンを使用しています。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウールメルトン
- ブルーグレー
- スイス国旗の樹脂ボタン
- チンストラップ
- ダブルカフス
- 背面のセンターベント
前期型との代表的な違いはボタンです。
前期型が金属製なのに対し、後期型ではスイス国旗を模した樹脂ボタンが使われています。
スイス軍 後期型グレートコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
ポーランド空軍 ウール オーバーコート
ポーランド空軍が式典やパレードなどで使用した実物オーバーコートです。
厚みのあるウールメルトンを使用しており、ブルーグレーの色合いが特徴です。
主な特徴
- 6ボタンのダブルブレスト
- 厚手のウールメルトン
- ブルーグレー
- 幅広のラペル
- ポーランドの鷲をあしらったボタン
- 背面のハーフベルト
- ダブルカフス
- 開閉式センターベント
金属ボタンには、ポーランドの国章に由来する王冠を載せた鷲の意匠が見られます。
ポーランド空軍 ウールオーバーコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
カナダ陸軍 ウール オーバーコート
カナダ陸軍のダブルブレスト・ロングコートです。
国内で確認できる1990年代のアメリカ製実物には、ウール100%の表地が使用されています。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウール生地
- ダークグリーン
- 脱着式ウエストベルト
- ジッパーで取り外せるライナー
- 膝付近までのロング丈
カナダ陸軍の同系統コートには、女性用のダブルブレスト型もあります。
カナダ陸軍 ウールオーバーコートの実物写真・仕様(WAIPER公式)
カナダ軍 レディース オーバーコートの実物写真(WAIPER公式)
イギリス陸軍 1940 Pattern グレートコート
第二次世界大戦期のイギリス陸軍で使用されたウール製グレートコートです。
海外では「1940 Pattern Dismounted Greatcoat」の名称で紹介されています。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウール生地
- カーキ・オリーブ
- 大きな襟
- 金属ボタン
- エポレット
- 背面ベント
- 長い着丈
海外で確認できる1947年製の実物には、ウール100%の生地、英国陸軍部隊の刻印入り真鍮ボタンなどが使用されています。
海外資料:British Army 1940 Pattern Greatcoat(Lambrino Militaria)
イギリス陸軍 1951 Pattern グレートコート
1951パターンのイギリス陸軍用グレートコートです。
英国の軍装品専門店では、1953年製の実物が紹介されています。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウール生地
- カーキ・オリーブ
- 金属ボタン
- 大型の襟
- コットン製の部分裏地
- 背面ベント
- ロング丈
1940パターンと同じく、重いウール生地と大きな襟が特徴です。1951パターンにも複数のサイズや製造仕様があります。
日本国内でも、1950年代のイギリス軍ダブルブレスト・ウールグレートコートとして扱われています。
海外資料:British Army 1951 Pattern Dismounted Greatcoat(Lambrino Militaria)
イギリス空軍 RAF ウール グレートコート
イギリス空軍(Royal Air Force)の実物ウール製グレートコートです。
イギリス陸軍のカーキ系コートとは異なり、空軍らしいブルーグレーが特徴です。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウール生地
- ブルーグレー
- 金属製の軍用ボタン
- 折り返し式の袖口
- ロング丈
英国の放出品専門店でも、Heavyweight Wool Construction(厚手ウール構造)のダブルブレスト・グレートコートとして紹介されています。
海外資料:British RAF Wool Greatcoat(B-Army Surplus)
フランス陸軍 ウール カポート(Capote)
フランス陸軍で使用されたウール製のロングコートです。
フランス語では「Capote」、厚手ウール生地は「Drap de laine」などの表現で紹介されています。
1950年代頃の実物には、M47・M50系として扱われるダブルブレストのコートがあります。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウール生地
- カーキ・ブラウン系
- 大型の襟
- 金属ボタン
- 背面のハーフベルト
- ロング丈
海外の実物資料では、密度の高い重量ウール生地、二列ボタン、背面のマルタンガル(ハーフベルト)を持つ個体が確認されています。
国内でも1950年代のフランス軍ウールグレートコートが扱われています。ただし、カポートは年代・仕様が幅広いため、すべてを同じ型番として扱うことはできません。
海外資料:Capote en drap de laine Armée Française(Doursoux)
国内実物資料:1950年代フランス軍グレートコート(古着屋Gold)
アメリカ・ドイツの歴史的な厚手ウールコート
米陸軍 1943年型 将校用ショートスタイル・オーバーコート
第二次世界大戦中の米陸軍将校用ウールオーバーコートです。
制式名称は「OVERCOATS, WOOL DOESKIN, O.D. 26 oz. OFFICERS’ SHORT STYLE」。
1943年4月10日採用の仕様が国内の実物資料で確認できます。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 26オンスの厚手ウールドスキン
- ウール100%
- キャメル系の色調
- 左右どちらでも留められる前合わせ
- 将校用のエポレット
- 膝上付近までの丈
ドスキンは、滑らかな表面に仕上げた高密度のウール織物です。
当時の将校用には、軍の仕様に従ってテーラーが仕立てた個体もあります。
国内実物資料:WWII US Army Officer’s Short Style Overcoat(MAS米海兵隊 USMC 1960年代 ウール オーバーコート
1960年代の米海兵隊で使用された実物オーバーコートです。
制式名称には「OVERCOAT, MAN’S, WOOL SERGE, GREEN」が使われています。
主な特徴
- ダブルブレスト
- ウール100%のサージ生地
- グリーン系
- 金属ボタン
- EGA(鷲・地球・錨)の紋章
- 背面ベルト
- ロング丈
同じ米軍でも、米海軍のPコートとは生地、色、ボタンの意匠が大きく異なります。
国内実物資料:1960年代 USMC ウールオーバーコート(Luby’s)
ドイツ国防軍 M36 将校用 ウール オーバーコート
第二次世界大戦期のドイツ国防軍で使用された将校用オーバーコートです。
M36系の実物には、フィールドグレーの厚手ウール生地を使用したダブルブレスト型があります。
主な特徴
- ダブルブレスト
- 厚手のウール生地
- フィールドグレー
- ボトルグリーンの襟
- 金属ボタン
- 将校用肩章
- 背面のベルト状ディテール
- ロング丈
国内で紹介された実物には、襟にボトルグリーンのドスキン生地、裏地にレーヨンサテンを使用した個体が確認できます。
国内実物資料:ドイツ国防軍 M36将校用オーバーコート(MASH)
まとめ
ダブル前で厚手ウールの軍用コートには、主に次の系統があります。
- 海軍のPコート: 米海軍、スウェーデン海軍、イタリア海軍、ポルトガル軍など
- 陸軍のグレートコート: イギリス軍、スイス軍、フランス軍、カナダ軍など
- 空軍のウールオーバーコート: ポーランド空軍、イギリス空軍など
- 歴史的な将校用コート: 第二次世界大戦期の米陸軍、ドイツ国防軍など
同じダブルブレストでも、国や軍種によって、ウール生地の織り方、ボタン、襟、着丈などに違いがあります。
各国の実物写真や細部の仕様は、ミリタリーショップWAIPER公式でも確認できます。














